そういえば、かつてはこうまで至近にあったことってなかった気がする。
胸倉掴まれて視線の狭間を縮められれば、
そのまま射抜かれて殺されるのではないかという恐怖を覚え、
どれほど虚勢を張っても身がすくんだものだ。
そうだったことなぞうっかり忘れていたほど、この人の懐は頼もしくて暖かい。
青年らしくしなやかな肉づきの頼もしい胸元には、
ラベンダーの香りの陰に潜むグリーンムスクの匂い。
ソファーに坐す彼の側から気安く伸ばされた腕に引き込まれ、
やさしい強引さで部屋着のシャツに頬が付くほど抱き込められて。
優しい暖かさにくるまれていると甘い声が届いて、
あのポンコツだった芥川くんが、敦くん限定とはいえ、
いろいろと察しが出来るようになったのはなかなかの進歩だ。
そんな風に褒めてくれるのが、得も言われずこそばゆい。
探偵社とマフィアの共闘と運んだ作戦行動のさなかでは
かつてと同じく厳しい視線に合理的な動きを求められる。
大筋の展開や方針へは ただただ遵守することを強い、
余計な思惑、忖度なぞ差し挟もうものなら、
結果がどうあれ意識がなくなるほど殴打された
そんな過去を思い起こすほどの冷徹さであり。
そこは今も方向的には変わらぬようで、
作戦展開中に余計な声を挟めば、
冷ややかな貌で見返されることもしばしばだ。
なので、
自宅で身を寄せ合うよに過ごす、優しいひと時であるにもかかわらず
「…ただね。」
そうと、一言。
ちょっとばかり頭上になる高さから囁かれた一言へは、
思わずのこと背条が伸びてしまった芥川で。
特に何かを気に入って選らんだ訳でもないフラットは、
居間と寝室に夜空と夜景が見渡せる大窓があって。
先日思わぬ銃撃を受けたの、マフィアの工作班が半日かけずに修復してくれたその窓から、
夜陰の今は、都会には珍しい輪郭の冴えた月がようよう望める。
その月影が降らせる月光が、急に冷ややかに思えたそのまま、
師の言葉が続くのを待っておれば、
ただね、
「??」
私とキミって付き合っているよね?
「????」
交際してるよね? 恋人同士だよね? 間違ってないよね?
「〜〜〜〜。/////////」
畳みかけられた文言に、
最初は意味が判らず困惑し。
続いて意味が通じて、そうですよねと肯定しつつ、
今度は胸のうちにじわじわ込み上げてきた熱に困惑し。
あれあれ? どうしようか。何か顔が熱い、胸がざわざわする。
これって何だっけ?
人虎に訊いてみた方がいいのかな?
困惑が動揺に変わりかかったところへ、
あ。その反応は嬉しいなvv
何を今更って呆れられるかと、内心怖かったからね。
だってのに 覗き込んだお顔は
“うわ反則だ///////”と胸が躍り上がったほど愛らしい紅潮を見せていて。
ほらもっとぎゅってしよう、何 照れてるかな♪
どっかのお兄さんも、人のことは言えないほど
この恋路には浮かれてしまっておいでのようでございます。
〜 Fine 〜 18.06.12.
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*来週の太宰さんのお誕生日に回そうかと思ったのですが、
日を置くとどこからの続きか判りにくくなるので上げました。
こちらのお二人も厳重に秘してるだけで、中敦に負けじと甘甘ですvv

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